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By ISSING-BLOG

山下達郎「希望という名の光」

 山下達郎の「クリスマス・イブ」は1990年代前半にJR東海のCMに起用されて以来、誰もが口ずさむクリスマス曲の定番となりました。今や「山下達郎」は季語になりつつあります。

 

 そんな山下達郎は、毎週日曜のお昼頃のラジオ番組を担当しています。このラジオ番組は、山下達郎の音楽ルーツである1950〜60年代のオールディーズソングを中心に、リスナーからのリクエストとお便り(ハガキにこだわっている)で構成されています。なんと放送時の音質にこだわり、自宅で所有のレコードをオンエアに適した音質に調整し直したものを放送していると言います。そのため「最高の選曲と最高の音質」のラジオ番組として親しまれているのです。

 

 そんな音楽へのこだわりが深い山下達郎の「希望という名の光」を今回紹介します。

 

 この曲が発表されたのは2010年ですが、2011年の東日本大地震によって大きく意味合いが変化しました。

 

 震災当時、まだ余震が続き油断を許さない状況の中、原発事故の恐怖、今後またすぐに大きな地震が起こるのではないかという不安もあり、日本各地では被害や亡くなった方々への思いを配慮し何かしらの自粛ムードが続いていました。

 

 そんな“国難”の中、この曲はこの時のためにある曲ではないかと思うほどのタイミングで、ラジオに流されました。

 

     

 

 今回、YouTubeで唯一載っていた「ラジオ番組で放送されていた熊本地震直後のライブ録音のもの」をこのページにリンクさせました。このYouTubeへの転載に関しては、公式に承諾を得ない勝手な転載ですが、山下達郎本人はラジオで熊本地震被災者のためにと「もし聴いてない方がいらしたらYouTubeに載っているので」とこの動画のことをラジオで紹介していました。

 

 私はすぐさまこの曲が収録されている、2011年に発売されたオリジナルアルバム『Ray Of Hope』を購入しました。

 

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 制作当初は『WooHoo』のタイトルで12曲入りのアルバムとして2010年9月15日に発売が予定されていました。しかし、制作過程で不満が生じたとして発売1か月前に延期を発表、以後発売日のアナウンスがないままシングルが数枚リリースされました。その後、1年近く経った2011年6月に発売日が正式発表されました。

 

 2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響を反映して、タイトルも本作の収録曲「希望という名の光」の歌詞の一節から取り、“Ray Of Hope”となったそうです。ちなみに、元々のタイトル『WooHoo』はただの語呂で特に意味はなく、リーマン・ショック以降に続く不況や社会の不安みたいなものを笑い飛ばすことをアピールするつもりのタイトルだったと言います。

 

 このアルバムの意味合い、内容構成は震災からの大きな影響を受けました。この『Ray Of Hope』のタイトルは「希望という名の光」の歌詞の一節から取られ、アルバムのオープニングとエンディングにもこの曲が使われています。

 

「この世でたったひとつの 命を削りながら」

 

「歩き続けるあなたは 自由という名の風」

 

 まるで何かを犠牲にしてまで困難に立ち向かって「頑張っている人」のことを指しているようです。その大変さは頑張っている人には計り知れないほどのものであり、それはまさに命を削るようにして「頑張っている」という表現以上の力を出しているような描写ですね。

 

「底知れぬ闇の中から かすかな光のきざし」

 

「探し続ける姿は 勇気という名の船」

 

 人はどんなにどん底でも、どんな闇の中でも光を見つけ出す力があります。その勇気は人間が防衛本能として、生きてゆくために備わっている最低限の機能です。例え病気で苦しもうと、先に進めず立ち止まっていようが、その機能は失われることはありません。

 

「運命に負けないで」

 

「たった一度だけの人生を」

 

 運命とは時として不幸や困難などを呼ぶことがあります。幸福なことだけを運命とは言わない、どこか現実感のある詩ですね。

 

「どうぞ忘れないで」

 

「移ろう時代(とき)の中から」

 

「あなたを照らし続ける」

 

希望という名の光を」

 

 この曲は足元がふらつく暗闇の中、一点の光に向かって歩き出し続けることで希望を失わずに生きていくことが出来るという、祈りを込めた現代における名曲です。