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By ISSING-BLOG 11/1からリニューアル

若者のカセットブームを考える

 最近、若者を中心に音楽を聴く手段としてカセットテープが流行りつつあると言います。何故今更になってカセットテープが注目されているかここでちょっと考えてみたいと思います。まずは若者におけるカセットテープのメリットを幾つか挙げてみたいと思います。 

 

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アナログ方が音質が良く聴こえる

 これを挙げる若者は結構いますね。音が良く聴こえるというか、心地いいんですよね。しかし、よく聴いてみるとアナログ音源の音って少しボヤけているというか、歪んでいるように聴こえるんです。ロックンロールを聴くとそれがよくわかると思います。「ガッツのある音」と言うのはこういうことかと思います。CDなどのデジタル音源はクリアで良いですけど、アナログ音源みたいな歪みがないからデジタル音源は飽きちゃうのかもしれません。なぜこんなクリアな音が簡単に聴けちゃう環境にいるのにアナログ音源の音が良いと感じるのかは、きっとそれが要因なのかもしれません。 

 

 そして、自然なノイズがあります。レコードであれば「ジジジ…」という感じですが、テープの場合「サァー…」というスクラッチノイズがあります。これに味を感じるんですね。

 

 アナログ音源の音が良い、というよりはアナログが生み出す音の方が味があり、聴きやすくて心地いいのかもしれません。

 

所有欲が満たされる

 今やダウンロード配信やストリーミング配信が主で、CDなどのパッケージメディアが廃れてきました。アメリカでは代表的なCDの生産工場が閉鎖されたとの情報もあります。しかし、クラシック愛好家を中心にまだパッケージメディアの需要はあるようです。

 

 レコードであれば、あの大きなジャケットに愛着を感じるのではないでしょうか。それがカセットテープであれば、あの手のひらサイズにメカニカルな見た目に愛着を感じるのではないでしょうか。そうやってジャケットを眺めながら音楽を聴くという「見る音楽」が楽しめちゃうのです。つまり、視覚的な欲を満たしてくれるのです。

 

「面倒くさい」が新鮮

 面倒くさくて不便なのが良いんですよね。再生したら巻き戻さないといけないし、表面(A面)が再生し終わったら自らの手で裏面(B面)にしなければならないという手間がかかります(※オートリバース機能がない場合)。そしてデジタルと違うのは「曲の頭出し」がやりにくいことです。これがかえって新鮮だと感じる若者が多いと言います。曲の頭出しがやりにくいことによって、一曲一曲を真剣に聴くようになります。そういう不便さが良いというのは、便利な時代だからこそ感じるのかもしれません。

 

マイベストアルバムが作れる

 iPodiPhoneiTunesでプレイリストを作成することができますが、カセットテープの場合、入る曲数が限られます。入る曲数が限られるので、自分の選りすぐりの曲を入れるというスタイルになるのです。それはまるで自分にしか作れないマイベストアルバムです。ひと昔はそれをカーステレオで流してドライブを楽しんだ人も多くいます。

 

 他にも、若い頃に自分で作った曲をテープに吹き込んでいた人もいるのではないでしょうか。それが未だに押入れの奥にしまってある…なんてこともありそうですね。

 

 それと、2014年1月にダブバンドTAMTAMがメジャー・デビューに際して全国のタワーレコードで「謎のカセットテープ」を無料配布したことが話題となりましたね。

 

 そうやってカセットテープという個性的な記録媒体に、自分の選りすぐりの曲の入ったマイベストアルバムを作れることはどこかそのアルバムに愛着を感じ、とても面白いですね。

 

 

 以上、私の主観ですがメリットを挙げてみました。デジタルしか経験していない若者世代だからこそアナログの価値観が良い方向に変化するのではないでしょうか。

 

  さて、今度は今の時代におけるデメリットを挙げてみたいと思います。

 

再生機がない

 今ではカセットウォークマンもなければ、カセット専用のレコーダーを発売しているメーカーもありません。確かに小さなカセットレコーダーやラジカセなんかは売っているのを見掛けますが、日本で生産しているものは一つもなく、安くて品質があまり良くありません。もちろん音質も良くありませんし、だったら数年前の再生機を状態の良い中古品で買った方が絶対に良いと思います。つまり、現行品で良い再生機はないのです。

 

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(レコーディングカセットウォークマン。大阪日本橋にて中古で購入。)

 

そもそも販売されている音源が少ない

 最近は敢えてカセットテープで発売しているアーティストも見掛けますが、そんなに多くありません。また、カセットテープの中古ショップも少なく、中古で買ったとしてもテープが伸びていて音質が良くないものがあります。つまり、そもそもカセットテープは手に入りにくいのです。

 

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(新品が限定生産版として販売されている場合もある。)

 

音質の劣化が激しい

 テープは湿気や高温に弱いです。それによってテープが伸び、音質が劣化してしまうことがよくあります。保存する時は万全の注意を払わなければなりません。また、再生時のスクラッチノイズも気になりますね。

 

やっぱり面倒くさくて手間がかかる

 再生したら巻き戻さないといけないし、表面(A面)が再生し終わったら自らの手で裏面(B面)にしなければなりません(※オートリバース機能がない場合)。それぞれの曲の頭出しがやりにくいのです。

 

 

 以上が主なデメリットです。デジタルが主な時代の中でアナログを経験することは容易ではないのです。だからこそ、アナログに興味を持つ若者が増えているのかもしれませんね。

 

 カセットテープ・アナログには確かに良さはありますが、今の時代、その良さを十分に経験できないのではないかと思います。

 

 マスコミに取り上げられていましたが、最近東京の中目黒に「Waltz」というカセットテープ専門店がオープンしたようです。私も興味はありつつもまだ行ったことがないのですが、豊富な品揃えの他に中古のカセット再生機も売っています。カセットテープの初心者にオススメできるお店だと思います。このお店だったらアナログの良さを堪能できると思います。

 

 こうしてレコードやカセットテープなどのアナログ音源が再ブームしつつあるように、若者はデジタル音源に飽きてきたのかもしれません。デジタル音源は確かに便利ですが、便利であることが決して良いことではなさそうです。それはあくまでもデジタル音源の便利さしか経験していない若者の価値観に過ぎません。この価値がブームとして長続きするかはまだ分かりません。

 

 いかがでしょうか。カセットテープが流行りつつある理由が少しでもお分かりいただけかと思います。これはまだ都市部での流行に過ぎません。しかし、その流行は広がりつつあります。実は昨年の11月に「日立マクセル」がカセットテープ発売50周年を記念して、1970年代に人気を博した「UD」シリーズのデザインを復刻したカセットテープ製品を発売しているのです。このように、今後代表的なメーカーの関与が増えればもっと流行が広がるかもしれません。