たとえば

心の赴くままに描くエッセイブログ。

過現未

 10月6日がいつの間にか過ぎていた。僕は何故か疲れている身体を起こしながら、鏡で、25歳になった自分を見た。

 

 10年前の君は、もっと痩せていて、毎日歌ばかり歌っていたよね。合唱をやっていて、まさか高校時代もやるとは思っていなかった。大学時代もやっていたが、とうとう挫折した。バンドもやっていて、いつの間にか独りでギターを弾くようになっていった。そしてギターも挫折した。

 

 一時期歌手になりたいとまで言った青年は、好きだった音楽を挫折し、今は普通にサラリーマンとして働いている。金が手に入り、自分が欲しかったものを手に入れた。でも、幸せはそこにはなかった。

 

 大した仕事でもないのに、ストレスで身体と心は病んでいる。だが、そんなことは言ってらんない。働かなければ、死ぬ、というわけでもないが、自分にとって働くことが前に進む唯一の道だと思っている。だから、例え日々夜眠れなくても、苦しくても、それが10年後の君の幸せのためなら…。

 

 ふと会社帰り、カラオケ店に独りで立ち寄った。学生時代以来、久々に独りカラオケに行った。とてもスカッとした。こんな快感は久々だった。やはり、僕は歌うことがとても好きだった。あの頃より下手くそだけど、また上手くなりたいという気持ちが沸々と湧き上がってきた。

 

 カラオケの音源で上手くなってもなんかつまらない。所詮、カラオケ用に作られた安いサウンドにのせて歌うんじゃ迫力がもの足りない。だったら、久々にギターで簡単な曲でも弾き語ってみよう。そっちの方が味があるし、より独特な音楽になる。

 

 と、まだ僕は歌っていた。それが自分にとって好きなことなんだ、と。それが趣味であれ、今後何になるか全くわからないが、とにかくこれは続けていこうと思う。

 

 昔みたいに、歌で食っていきたいとか、大きな夢は持たない。もっと違う、何か、この世にはないものを創りあげたいっていう気持ちもない。ただ、自分のやりたいことだけやって突き進むだけでいい。最初っからそれでよかったのだ。ようやく、僕は気づいた。

 

 10年後の君は、まだ歌っているのだろう。もしかして、エレキギター弾いてる?それともジャズギターとかやってる?でも本当はクラシックギターでかっこよく引き語れるようになっている?うーん、10年後の君は、何やってんだろ。